第6章 アニマートに色づく日常【鉄骨娘/始まり】
「っていうかさ、詞織も呪術師だろ。普段、呪霊と戦ってるなら、あれくらいの不良とか怖くないんじゃねぇの?」
虎杖の言葉に、詞織は拗ねたように唇を尖らせる。可愛い。
「……呪霊は怖くない。呪術でいくらでも攻撃できるから。人間はダメ。呪術で攻撃できない。メグほど体術も得意じゃないし」
「そういうもん?」
「そーゆーもん。もういいでしょ」
話を打ち切るように、詞織は一人でコンビニに入って行く。
すると、虎杖が「伏黒」と名前を呼んできた。
振り返ると、やや神妙な表情でこちらを見ている。
「なんだ?」
「伏黒と詞織って……もしかして、つき合ってんの?」
「ゴホッ! は、はぁ⁉︎」
突拍子もない台詞に思わず咽せると、虎杖がビクッと肩を震わせた。
「おい、大丈夫か?」
「あぁ……てか、なんでそんな話になってんだ?」
「え? や、さっきさぁ、アイツらが『彼氏か?』って聞いたとき、伏黒は否定しなかったじゃん? だから、つき合ってんのかなぁって」
そういえば、あの不良たちのどっちかがそんなことを言っていたような……?
頭に血が昇ってて、あまり深く考えてなかった。
「別に。アイツとはただの幼なじみ。つき合ってるわけじゃない。答えるのもバカらしかっただけだ」
「ふぅん」
「なんだよ」
意味ありげに頷く虎杖に、伏黒は渋い顔をして聞くが、彼は「別に〜」とはぐらした。
いや。本当になんなの?
「メグ、ユージ。なんにも買わないの?」
待ちくたびれた詞織が、コンビニの自動ドアを開けて呼びかけてくる。
「おぅ! 行く行く!」
コンビニに駆け込む虎杖に、伏黒はグルグルと混乱する頭を振って後を追った。
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