第6章 アニマートに色づく日常【鉄骨娘/始まり】
詞織を一瞥し、伏黒は「断る」ときっぱり言い切った。
「へぇ〜? オレたちと戦(ヤ)ろうってか?」
「ガキだからって手加減しねぇぞ、コノヤロー!」
パンパンと拳を打ちつけて威嚇する不良の一人が、大きく振りかぶって拳を放ってくる。伏黒はそれを軽く避け、その不良の足を引っ掛けた。
普段、呪霊との戦いでは、呪術だけでなく体術も使っている。
つまり、そこらの不良など敵ではないのだ。
もう一人も向かってくるが、その攻撃もサラリと躱し、腕を掴んで地面に投げ飛ばしてやった。
「スゲー! 伏黒、めっちゃ強ぇじゃん! 俺の出る幕ねぇな」
「メグは強いよ。校舎の四階に飛び込んだりはできないけど」
体術できるからって、そんなことできるようにはならないんだよ。
慌てふためいて逃げ去る不良たちを見送り、伏黒は大きく息を吐いた。
「バカ」
「いたっ」
コツンと詞織の額を小突く。
「何も考えずに突っ込むなって、いつも言ってんだろ。あのまま連れて行かれたら、どうなってたか分かってんのか?」
「え、えっと……ボコボコに殴られる、とか?」
「だったらマシだ」
連れて行かれていたら、確実に強姦されていただろう。
泣き喚く詞織を無理やり力で押さえつけて。
考えただけでも吐き気がする。ヤツらを殺さないでいられる自信がない。
「はぁ……俺がいる前なら別にいいけど、いないとこじゃ絶対すんな」
「う……わ、分かった。善処する」
「"絶対"って言ってんだろ」
詞織の頬を両手で摘んで引っ張ると、「痛い痛い!」と涙目で訴えてきた。可愛い。