第6章 アニマートに色づく日常【鉄骨娘/始まり】
「オイッ!」
「どう責任取ってくれんだ⁉︎ アァ⁉︎」
怒鳴る不良たちに、詞織は首を傾げる。
おそらく、なぜ怒っているのかが分からないのだろう。
「へぇ〜。お嬢ちゃん、キレイな顔してんじゃん」
「おいおい。ガキ相手にすんのかよ。ロリコンか!」
少女の顔をマジマジと見た不良たちが一転、下卑た笑いを浮かべた。
詞織の夜色の瞳に恐怖が走る。
自身の置かれた状況を、ようやく理解したらしい。
「伏黒!」
「後先考えずに突っ走るからだ!」
助けよう、と虎杖が伏黒の名前を呼ぶが、それより早く身体は動いていた。不良の背後に立ち寄り、「おい」と声を掛ける。
「何だ、にいちゃん」
振り返った不良が不機嫌な眼差しで睨んできた。
まぁ、こんな不良よりも数段ヤバい存在と命のやり取りをしている伏黒にとっては、蛙に睨まれた程度にしか感じない。
伏黒の登場に、二人の不良は余裕の態度。
おそらく、自分たちより格下だと判断したのだろう。
「なんだぁ? このお嬢ちゃんの彼氏か?」
「だったら何だ?」
伏黒は怯むことなく不良を睨み返す。
「悪ィけどさぁ、今からこの嬢ちゃんには責任とってもらわねぇといけねぇのよ。後にしてくんない?」
バカか。それで頷くくらいなら、助けに来たりしない。
「め、メグ……」
震える声で詞織が名前を呼んでくる。
全く。怖いなら放っておけばいいのに。
まぁ、困っている人間を無視できない詞織のことも、嫌いではないのだが。