第6章 アニマートに色づく日常【鉄骨娘/始まり】
「メグ、喉かわいた。わたしたちも何か買おう?」
「そうだな……」
三人でコンビニの敷地に入ると、駐車場で二人の男が何か話しているのが目に入った。いや、二人じゃない。一人の女性を、不良が取り囲んでいる。
「やめて下さい……私、彼氏と待ち合わせしてて……」
「いいじゃん。彼氏待ってる間、ちょっとお話ししようよ」
「むしろ、彼氏との約束断って、オレらと遊ばない? ゼッテー楽しいから!」
下品な笑い声を上げる不良たち。女性の方は、恐怖で声が震えている。
見かねた虎杖が動こうとする。
だが、それより早く駆け出した人物がいた。
「ば、バカ!」
伏黒の止める声も聞かず、詞織は「ねぇ」と不良の肩を叩く。
「あぁ?」
振り返って凄んだ不良が目を丸くした。
まさか、まだ学生の年齢の少女が呼んだとは思わなかったのだろう。
「やめてあげて。その人、泣いてるから」
大丈夫? と詞織は女性にハンカチを差し出した。
「泣かないで。お化粧、崩れちゃうよ」
コクコクと頷いた女性は、受け取ったハンカチで涙を拭う。
「ハンカチ、あげるから。早く彼氏さんのところに行った方がいい」
「あ、ありがとう!」
頭を下げて女性が立ち去った。
あまりに予想外の出来事に、不良たちは一連のやりとりを、ポカンとした表情で眺める。
やがて理解が追いつくと、彼らは顔を真っ赤にして詞織の肩を殴りつけた。