第49章 スビト・フォルテな衝撃【渋谷事変】
辺見 雄太郎の術式――【共覚鏡像】。
自分と相手が共通して知っている人物に変身できる術式。
さらに 変身した対象と相手の共通の記憶を読み取ることも、変身した対象の術式も模倣できる。
ただし、読み取っているのは変身した人物ではなく、あくまで目の前の相手の記憶。
だから、術式の模倣も相手が知っている情報に依存するし、模倣した術式のポテンシャルは自分の実力に依存する。
「なるほど。ちょうどいい――けど、“悠仁に奪えるかな?”」
虎杖、だったか。五条に変身したのは正解だった。
だが、虎杖の知っている五条の術式は、稽古中に拳を止める常時発動の【無下限】しかない。
交流会で大技を披露したようだが、発動の瞬間を見ていないから模倣は無理。
【領域展開 無量空処】はキャパシティが足りなくてこちらも使えない。
……というか、虎杖の記憶の中でも、五条 悟はとんでもない男だった。
まぁ、揺さぶってやれば虎杖は面白いくらいに動揺する。
この感じならば、模倣した劣化版【無下限呪術】でも殺せるだろう。
「くそっ……‼︎」
虎杖の拳に呪力が溜められた。
渾身の一撃……本物の【無下限呪術】なら簡単に防げるだろうが、辺見のポテンシャルの【無下限呪術】では攻撃が通る。そういう、呪詛師の勘。
「僕を殺すの、悠仁……?」
辺見の言葉に虎杖の拳の勢いが落ちる。身を引いて躱し、辺見は虎杖と距離を詰めて回し蹴りを食らわせた。
コイツ、思ったより“できる”な。時間をかけすぎると危険だ。
もう少し揺さぶって、心をへし折ってやる。
「……ガッカリだよ、悠仁。君の強さはこんなものじゃないだろ? どうしたの? 調子悪い?」
五条の口調を真似して、少しおどけた口調で言い放った。すると虎杖は、なぜか声を上げて笑い出す。