第49章 スビト・フォルテな衝撃【渋谷事変】
「はははっ……! やっぱ、そうだ。オマエは五条先生じゃねぇ」
「…………?」
虎杖の言葉に、男が怪訝そうに眉を寄せる。
最初から分かっていたことだ。それでも……頭では分かっていても、視覚が五条を認識してしまい、拒絶できなかった。
「何を……」
「オマエの術式の理屈とか、仕組みとか、何一つ分かんねぇけど……」
フラリと立ち上がり、虎杖は拳を握った。
「オマエ、誰に化けてんのか分かってんのか? 五条 悟! 最強の呪術師だぞ‼︎ その最強が……ッ!」
虎杖は腰を低く落として拳を構える。
「俺“なんか”に殺されるかもとか、思うわけねぇだろ――……ッ‼︎」
虎杖は拳に呪力を込め、渾身の一撃が放った。男が身を引こうとしたのを逃さず、虎杖はさらにもう一歩 踏み込んだ。反対の手で胸倉を掴んで引き寄せ、顔面を殴りつける。
「ガッ……⁉︎」
吹き飛んだ男は術式が解けたのか、最初に会った壮年の老人に戻っていた。
「やっぱ、全然 似てねぇわ。今の戦い、本物の先生だったら 俺の拳を避けるなんてしねぇ」
そう呟いて男の懐を探り、虎杖は【帳】の基を壊した。
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