第6章 アニマートに色づく日常【鉄骨娘/始まり】
虎杖が隣の部屋に引っ越してきた翌日。
伏黒は、詞織と虎杖の三人で、五条に集合場所として指定された原宿の中野駅に向かっていた。
「つーかさぁ、一年がたった四人って少なすぎねぇ?」
道中のコンビニで買ったアイスバーを齧りながら、虎杖がなんの脈絡もなく呟く。
まぁ、"普通"の学校なら、一クラスの生徒が一桁というのはありえないだろう。だが、呪術高専は"普通"の学校とは違う。
「ユージは、呪霊が見えたり、呪いを感じたりできる人と、今まで会ったことある?」
「んー、ねぇな」
ガジガジとアイスを頬張りつつ答える虎杖に、伏黒は「つまり」と続けた。
「それだけ少ねぇんだよ、呪術師は」
なるほどな、と納得する虎杖がアイスバーを食べ切る。棒を舐めとった彼は、「あ、アタリだ」と喜びの声を上げた。
「そういやさ、俺が四人目って言ってなかった?」
虎杖が疑問に思うのも無理はない。
すでに六月。なのに、なぜ一年生が全員揃っていないのか。
実際、三人目の一年生の入学は随分前に決まっていたらしい。それが、何かしらの事情によって遅れたとのことだ。
決して多い事例ということはないが、珍しい話でもない。
伏黒が説明すると、虎杖は「へぇ〜」と相槌を打った。
「あ、コンビニ寄っていい? アタリ変えてくる」
虎杖が目に入ったコンビニを指さす。
「遅れるぞ」
そう言うが、実際は再びコンビニに寄っても充分間に合う。
それに、五条のことだ。どうせ、また数分遅れてくるだろう。
遅刻する時間が微妙すぎて何も言えないが。