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夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第49章 スビト・フォルテな衝撃【渋谷事変】


「うらぁっ!」

 ビタッと見えない壁に阻まれた。

「これ……五条先生の【無下限呪術】⁉︎」

 フッと口角を上げ、長い足で虎杖の腹へ蹴りを入れる。

「強くなったね、悠仁。今でも思い出すよ。初めて会った頃は呪術に関して右も左も分からなかったのに、今じゃ 特級とも渡り合えるくらいに成長した。教育者として嬉しいよ。君を助けることができて本当によかった」

 なんで……なんで、オマエがそんなことを知っているんだ。

 初めて会った相手のはずなのに……見た目や声だけではない。仕草も、雰囲気も、術式も、全て記憶の中の五条と重なる。

「違う! オマエは五条先生じゃねぇ!」

 頭を振り、男に迫った。

「何 言ってるの、悠仁? 僕が分からなくなっちゃった? そんなわけないよね? こんなカッコよくて強い僕が分からなくなるなんて、あるはずないよね?」

 拳を振るたびに、男が五条を真似て言葉を発するたびに、名前を呼ばれるたびに……焦燥が走る。

 違うと頭では分かっているのに、攻めきれない。その代わり、男の拳や蹴りは容赦なく虎杖を襲い、腹に決まった拳に虎杖は血を吐き出す。

「くそっ……‼︎」

 ボゥッと拳に呪力を溜め、男の懐に入る。そして、渾身の力で打ち据えた――……。


「僕を殺すの、悠仁……?」


 ハッと寸前で鈍る。

 勢いの落ちた拳を、男は身を引いて“躱した”。行き場を失った虎杖の拳が床を抉る。そんな虎杖に一足飛びで距離を縮め、男は虎杖に回し蹴りを食らわせた。

「……ガッカリだよ、悠仁。君の強さはこんなものじゃないだろ? どうしたの? 調子悪い?」

 煽るような言葉。五条の姿で口角を上げながらニヤつく姿に、虎杖は思わず「はっ」と笑った。
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