第49章 スビト・フォルテな衝撃【渋谷事変】
「虎杖、二本足りねぇ!」
「リョーカイ!」
とっさに二本隠したのか。おそらく、先ほどの小柄な男とスーツの男が持っているのかもしれない。
虎杖は視線の先にいた三揃えのスーツを着た男をワイヤーで絡めとる。転落した呪詛師はビルの下で待機している伏黒と詞織に任せるしかない。
不可抗力だったとはいえ、この高さからの落下だから死んでいるかもしれないが、遺体から【帳】の基を回収して破壊してくれるだろう。
ギュィィィンッとワイヤーを伸ばしてビルを飛び降りる。
「伏黒! 【鵺】解け‼︎」
反動を利用してビルの窓を割り、中へと転がり込んだ。振り落とすつもりだったが、スーツの男も巻き込んでビルの中へと入ってくる。
「随分な荒技を……」
「【帳】の基 持ってんだろ。寄越せ」
「寄越せと言われて渡すくらいなら、呪詛師などやっていませんよ。ところで……先ほど五条 悟の封印を叫んでいたのはあなたですね?」
「そうだけど」
怪訝な目で相手を見ると、突然 男は笑い始めた。
「なるほど。ちょうどいい――けど、“悠仁に奪えるかな?”」
サァ…と男の顔が、身体が違う輪郭を形作り、五条 悟へと変化する。
「五条先生⁉︎ なんで……⁉︎」
封印されたはずだろう。いや、違う。これはきっと この男の術式。理屈は分からないが、変身の術だろう。
今 目の前で変わるのを見たのだ。惑わされはしない。
とっととぶっ叩いて【帳】の基を破壊して、階下の伏黒たちと合流する。
呪力を拳に纏わせ、虎杖は床を蹴り、五条の姿をした男へと迫る。