第6章 アニマートに色づく日常【鉄骨娘/始まり】
気がつけば、見慣れた天井。
周囲を見渡すと、調度品の少ない、飾り気のない自室の景色。
机の上に置かれた写真だけが、この部屋に生活感を与えていた。
詞織は気怠い身体を引きずるようにして机の前に立ち、写真立てを持ち上げる。
ちょうど、星也と星良が呪術高専に入学したときに撮ったものだ。詞織と伏黒は小学六年、津美紀は中学生に上がったばかりだった。
近くの公園の桜を背景に、通りがかった花見客に頼んで撮ってもらったのだ。
鮮やかに、思い出せる。
楽しかった日々は、一日一日が詞織にとって宝物だ。
詞織は指先で写真に触れる。その触れた先には、幼い伏黒がいた。
ギュッと腕を絡める詞織に顔を真っ赤にし、カメラを睨むように見ている。
「……愛してる。詩音のこと、世界で一番愛してる。でも……」
一番、大好きなのは――……。
* * *