第49章 スビト・フォルテな衝撃【渋谷事変】
「状況を確認次第、新田さんはもう一度 【帳】の外へ。中で電波が断たれる以上、誰かが常に外にいなくてはならない。あなたにはその役をやってもらいたい」
七海たちを見送った伊地知は、すぐに新田へ連絡をとった。さらに別のスマホを使い、補助監督へメッセージを送る。
補助監督役だけでなんとしても連絡網を確立する。非番と【窓】の一部も動員すれば可能なはず……。
「えいっ」
背後から刀が突き立てられ、腹部から刃が伸びた。
何が起きているのか分からないまま 遅れてやってきた激痛の中で、「えいっ、えいっ、えーいっ」と追い打ちをかけるように何度も刺される。
痛みに全身が痺れ、感覚が麻痺し、伊地知はその場に倒れた。
連絡を……そう思うのに、指先一つ動かせない。
「やっぱ俺には、弱い者イジメが向いてるなー」
どうにか視線だけ動かし、自分を刺した青年を見上げる。長い髪を一つに結んだ、細身で小柄な若い男だ。
「これでいいんでしょ?」
「はい」
髪の長い青年とは違う少年の声――だが、視線を動かした先にいたのは、白髪をおかっぱにした、外見だけは着物の少女。この情報だけでは性別は断言できない。
――「名前は知らねぇ――男か女かも分かんねぇ。白髪オカッパのガキだ」
交流会襲撃で捕縛した呪詛師が言っていたことを、揺らぐ意識の中で思い出す。
「あなたはこのまま【帳】の外で、スーツの人間を狩り続けてください」
「はーい。終わったら中 行っていいよね」
その言葉を聞いたのを最後に、伊地知の意識は途切れた。
* * *