第49章 スビト・フォルテな衝撃【渋谷事変】
――21:22
東京メトロ 渋谷駅
13番出口側(【帳】外)
「……確かに、駅に閉じ込められた分を差し引いたとしても、人口密度が低かったですね」
伊地知からの報告に、七海が顎に手を当てて思案する。彼の言葉に、詞織も伏黒と頷いた。
「建物内に待機していた改造人間が、今になって非術師を襲い始めた、か……」
「だから、俺たちも待機をやめて突入……仕方がないですね」
仕方がない……とはいえ、対応が後手に回りすぎだ。
【帳】内への突入は七海班だけでなく、禪院、日下部の両班も同時刻に開始することになっている。
「だが、一番気がかりなのは……」
「同……」
「同時に下りた“術師を入れない【帳】”、だよね」
「五条先生が現着してからそこそこ時間が経ってる。なぜ このタイミングなんでしょうか?」
七海の言葉を引き継ぐように詞織は伏黒と続けた。猪野が何か言おうとしていたようだが、遮って申し訳ない。
“イヤな予感”がする。今までに感じたことのないような、頭痛がするほどの強い不協和音。
「大丈夫か、詞織?」
気遣う伏黒に、詞織は額を押さえながらコクリと頷く。
「頭痛? “イヤな予感”か?」
ポケットから頭痛薬を取り出し、手渡してくれた。それを受け取り、水で流し込む。
「無理すんなよ」
「それは約束できない」
頑固、とツンと伏黒に額を突かれ、詞織は唇を尖らせて睨んだ。
「中で何かあったのか、戦略上 このタイミングである必要があったのか。確実に言えるのは、無策で挑んでくるタイプではないということ」
そう 七海は固い声音で言いながら、ジャケットを脱いだ。
「私は【帳】を下ろしている敵を。三人は片っ端から一般人を保護してください」
詞織は伏黒、猪野と頷いた。
――同刻、三班 突入。
* * *