第48章 混乱極まるラプソディ【渋谷事変】
『形を変えラレタ人間は味が落ちるンだ! 俺は賢いから違いガ分かル‼︎』
バゴッと、気がつけば虎杖はバッタ呪霊を蹴り上げていた。
傍らに転がされた頭部のない死体。それを見て頭が燃えそうなほど激しい怒りを覚えるも、理性で急速に冷ます。
畳み掛けるように身体を旋回させ、虎杖は遠心力を利用して強烈な拳を叩き込めば、バッタ呪霊の身体が壁にめり込んだ。
里桜高校で、真人に殺されそうになった順平を見た。
殺してくれと、異形にされてしまった人間の声を聞いた。
八十八橋で自分を嘲笑う宿儺の笑い声が耳の奥に蘇った。
「オマエらはどいつもこいつも――……」
呪霊はどこまでいっても【呪い】でしかない。
嫌というほど分かっていたことだ。
「人間 舐めるのも大概にしろよ」
拳を構え、低く腰を落とす目の前で、バッタ呪霊が身を起こす。
『さてはオッ、オマエ、賢くないナ……⁉︎ 俺が何の【呪い】カ分かってないダロ。知っテいるか? コノ世界ハ、賢くないヤツから死ヌんダ』
「……バッタの【呪い】だろ?」
そんなの、最初にコイツを見たときから気づいていたが。
そう言ってやると、バッタ呪霊は驚きに目を丸くした。
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