第48章 混乱極まるラプソディ【渋谷事変】
「ツギハギ顔の呪霊が来てるだろ? どこにいる?」
自分でも驚くほど低い声が出る。
『ツギ……ハギ……? ツギハギ?』
「顔に縫い目のあるヤツのことだ」
顔を指で示して見せると『馬鹿にスルな!』と騒ぎ出した。
『真人は、下……俺はココで【帳】ヲ守ってるンだ』
「マヒト……?」
そういえば順平も、あのツギハギ顔を『マヒト』と呼んでいたような気がする。いや、今は名前なんてどうでもいい。
前に五条から聞いたことがある。結界術は難しいらしい。五条はできるらしいが、強いからできるという単純な話ではないとのことだ。
それを踏まえた上で、目の前の呪霊はどうだ。言葉が分かるのだから、それなりの等級なのだろう。
だが、「呪術師」も上手く言えない程度の知能の呪霊に、結界術を使うだけの技術があるのか。それも、おそらく意図的に二枚も下ろしている。
なんだかなぁ、と内心で首を傾げていると、バッタ呪霊の後ろに呪符を巻きつけた杭のようなものを見つけた。
そういえば先ほど、この呪霊は「下ろす」でも「張る」でもなく、「守る」と言っていた。そう考えると、あの杭はかなり怪しい。
とりあえず壊すか。
そんなことを考えていると、バッタ呪霊が唸り始めた。
『真人の“じゅじゅちゅ”はヨくない』
そこで言葉を区切り、呪霊は『知ってるカ?』と目をギョロつかせながらこちらを見る。