第48章 混乱極まるラプソディ【渋谷事変】
「だいたい分かった」
そう言って、虎杖を呼ぶ。
「弱い改造人間をたくさん殺すのと、強い呪霊を一体 祓うの、どっちがいい?」
一瞬 何を言われたのか分からなかった。ゴクリと無意識に息を呑む。
「ま、君の場合は後者だよね」
軽く息を吐き、冥冥は続けた。
「改造人間がウロついて一般人を襲っているのが地下四階。一般人はほとんど地下五階の副都心線ホームにいると思う」
「思う?」
術式で烏と視覚共有して見たのではないのか。そう思って首を傾げる。
「私が遣った烏は呪力を帯びているからね。地下五階には入れなかった」
“一般人を閉じ込める【帳】”によって外へ出ることはできない。そして、そこには自分たちを殺す恐ろしい“化け物”がいる。だから、一般人たちは地下に逃げるしかなく、地下五階に集まった。
「私の烏が狩られたのが地下一階と地下二階の間。ここに【帳】を下ろしている呪霊か呪詛師がいる」
再び上がってきた一般人を狩るつもりなのか、【帳】の条件の問題か。位置取りの理由も、地下五階を隔離している目的も不明。
だが、そんなことはどうでもよかった。
「いるんだな――このすぐ下に、アイツが」
虎杖はピシッと下を示す。
ようやく、この手で祓うことができる。昂る自身の感情を、虎杖は驚くほど冷静に理解していた。
そんな虎杖に、冥冥は小さく首を振る。