第48章 混乱極まるラプソディ【渋谷事変】
「一度 地上に出るよ」
「え……なんで……?」
今から敵陣に乗り込むのではないのか?
だが、冥冥は理由を語ることなく地上へ続く階段へ向かっていく。
「ちょ……っ!」
「早くしないと置いていきますよ」
眉を寄せる憂憂に、「だから、理由は⁉︎」と聞くが、少年はやれやれと一つため息を吐いて見せた。
「野暮なこと聞かないでください。姉さまのすることに理由なんていらないんですよ」
は? としか思えなかったが、本当に説明をする気がないらしい。置いて行かれるのも困るため、虎杖はついて行くしかなかった。
地上へ戻ってくると、冥冥は不意に片手を高く上げる。そこへバサバサと羽音を立て、数羽の烏が集まってきた。彼女は集まった烏 一羽一羽を撫でてやり、「頼んだよ」と短く言って駅構内へ行くよう指示した。
「何してんの⁉︎ 急がねぇと!」
階下を見下ろして動かない冥冥に焦れ、虎杖は憂憂に声をかける。そんな虎杖に、憂憂は「シッ」と口元に人差し指を当てた。
「姉さまは今、烏たちと視覚を共有しています。集中力のいる作業です。静粛に」
「別にいいよ、喋っても」
冥冥の言葉に「いいって」と示すと、憂憂は「もうっ、姉さまったら」と頬を染める。
やがて、「……うん」と頷きながら微かに瞼を開いた。