第47章 長き決戦のオーバーチュア【渋谷事変】
――20:40
東京メトロ渋谷駅 B5F 副都心線ホーム
『来たな』
しわがれた声で火山頭の呪霊が一つ目でこちらを見て来る。
交流会前に襲撃し、秒速で撃退してやった奴だ。虎杖のためのいい教材になってくれた。
無限を操作して線路に降り立ち、五条は「クックッ」と笑いながら腰を落として構えた。
「準備バッチリってわけだ。これで負けたら言い訳できないよ」
相手は特級三体。
火山頭の手の内はだいたい知れている。
目から樹木を生やした雑草レベルの呪霊は交流会で虎杖と東堂が相手をしていた奴。こちらも二人から話を聞いている。
顔に一線が描かれた二つ結びの男――アレはお初だな。
『貴様こそ、初めての言い訳は考えてきたか?』
火山頭の言葉に、五条は「誰にもの言ってんだ」と笑みを深くした。
そこへ、吹き抜けがザザザ…と樹木の根で覆われていく。さらに出入口も同じように塞がれ、五条はため息を吐いた。
「んなことしなくたって逃げないよ。僕が逃げたらオマエら、ここの人間全員を殺すだろ?」
だから わざわざ、罠だと分かっていてここまで来たのだ。
「あの二人、何 喋ってんだ?」
「いや、四人だろ」
ホームの人間の言葉が聞こえる。
二人、ね。四人って言ったヤツは“視える”側の人間。
火山頭と樹木は呪霊で間違いない。そして、呪力の感じからして、あの人型は受肉体――【九相図】か。