第47章 長き決戦のオーバーチュア【渋谷事変】
――20:39
青山霊園
【冥冥班】
・冥冥(一級術師)
・憂憂(ういうい)
・虎杖 悠仁(一級査定保留中)
「五条先生一人にやらせるぅ⁉」
冥冥からの説明に納得いかず、虎杖は声を上げた。
敵側の要求に応じて五条を派遣――最強である五条ならば、すぐにでも解決してくれるだろう。
それでも――……。
「理屈は分かるけどさ、俺たちにもできることがあるでしょ! バックアップとか‼」
墓石に腰をかけ、優雅に足を組む冥冥にそう叫ぶと、彼女は「うん」と一つ頷いた。
「だから、それをしに今から渋谷へ行くんだよ」
「あっ、そうなの⁉」
それなら早く言ってくれればいいのに。
「姉さまにバックアップをさせるなんて。五条 悟……贅沢な男ですね」
冥冥と似た面差しを持つ幼い少年――憂憂が眉を下げてため息を吐く。
「彼をその辺の男と同レベルで考えてはいけないよ」
「姉さまだってその辺の女とは違いますっ」
「あぁ、憂憂。オマエは本当に……愛い奴♡」
自分はいったい何を見せられているのだろうか。
遠い目でイチャつく姉弟を眺めていると、冥冥が弟を抱き寄せ、憂憂が姉にすり寄った。
「また思ってもないことを。姉さまが愛でているのは、家族という雇用関係でしょう?」
「フフ……よく分かっているじゃないか。そういうところ、好きだよ」
姉の甘い言葉に憂憂が顔を赤らめる。
ねぇ、早く行こうよ……。
そこへ、ヴー、ヴー…と冥冥のスマートフォンのバイブが鳴った。電話に出た彼女が「へぇ」と紅を引いた唇を持ち上げる。電話を切り、冥冥がこちらを見た。
「虎杖君、行き先 変更だ」
冥冥の話によると、明治神宮前駅に渋谷と同様の【帳】が下りたらしく、至急 そちらに向かってくれという指示だったらしい。
「走るよ」
傍らに置いていた愛用の武器を憂憂に持たせて艶やかな微笑を浮かべる冥冥に、虎杖は「押忍」と勢いよく応じた。
* * *