第47章 長き決戦のオーバーチュア【渋谷事変】
――同時刻。
文化村通り 道玄坂2丁目東(【帳】内)
「どうなってんだ⁉」
「なんで通れないの⁉」
何十人、何百人と閉じ込められた非術師――一般人たちが戸惑い、狂ったように目に見えない壁――【帳】を叩く。
中には何が起こっているか分からない様子で泣きじゃくり、叫ぶ。
ハロウィンで仮装して楽しい一日になるはずが、一転 恐怖の淵へと立たされたのだ。
「早く五条 悟を連れて来い!」
ドンッ、ドンッと【帳】の壁を叩き、男が訴えった。
「五条って誰だよ!」
「知らねぇよ! でもソイツが来ねぇと出らんねぇって言われたんだよ‼」
「誰に⁉」
「知らねぇよ! 皆だよ‼」
「こういうときクールじゃない男たちってどうよ?」
仮装した二人の女が騒ぐ男たちへ白けた視線を向ける。
「まぁ、通れないのはホラーではあるけど、そこまで困ってないよね。そのうち助けが来るでしょ」
「あ、でも圏外!」
スマートフォンを操作していた女が「最悪!」と落胆した。そんな女たちに、【帳】を叩いていた男が振り返る。
「オマエら見てなかったのか?」
固い声音、緊張した面持ちの男に二人は首を傾げた。
「吸い込まれたんだよ! 交差点にウジャウジャいた人間が、駅ン中に! 栓を抜いた風呂の水みてぇによ‼」
そのときのことを思い出したのか、男はガタガタと震え出す。
「じゃなきゃ、俺らだって電車で帰るっつーの! 考えりゃ分かんだろ! 低学歴がよ‼」
「はぁ⁉ じゃあ、学歴でそこ通れるようにしろや!」
苛ついて吐いた暴言に女たちが青筋を立てて目を吊り上げた。
そこへ、トプッと手が入ってきて、そのまま長身の男が入って来る。目隠しをした白髪頭で、驚くほど背の高い男だ。その男が肩にぶつかった。
「あ、ゴメン」
――20:31
五条 悟 現着
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