第47章 長き決戦のオーバーチュア【渋谷事変】
――同時刻。
JR渋谷駅 新南口(【帳】外)
【日下部班】
・日下部 篤也(一級術師)
・パンダ(準二級術師 昇級査定 保留中)
「高度な結界術に、五条 悟を指名したこと……これは交流会を襲撃した連中と同一犯だ」
ガードレールに腰を掛けて棒付きのキャンディを舐める日下部を、パンダは地面に座り込んで見上げる。
そう。上層部は被害を最小限に抑えるため、五条 悟“単独”での渋谷平定を決定した。
【帳】の外で待機している自分たちや七海、直毘人、冥冥は五条のこぼれ球を拾う係。
それに、【帳】に入ってしまうと電波が遮断されていて連絡がつかなくなってしまう。
「被害を最小限って、術師の被害のことだよな。一般人の被害はおかまいなしか?」
少し責める口調になってしまったのは仕方がないだろう。
それに気づいた日下部が「そう つっかかんなよ」と深いため息を吐く。
「去年のクリスマスに起きた百鬼夜行と違って、もう事が起こっちまってる」
俺もこれが最善だと思う、と言いながら日下部は宙を仰ぎ、【帳】へ視線を向けた。
「それに、さっき【帳】の内側を見てきたが、平和なもんだったぜ」
一般人がパニックになっているが、呪霊や呪詛師が殺し回っているわけではないらしい。現状はただ一般人が閉じ込められているだけ。
そう話して、日下部は「ただ」と続けた。
「俺はもう中に入んのはごめんだね」
「なんでだ?」
首を傾げて尋ねると、日下部はキャンディを口から出して、小さくなった飴を見つめる。
「アレはヒカリエかなぁ。おそらく、地下に特級呪霊がゴロゴロいる」
* * *