第47章 長き決戦のオーバーチュア【渋谷事変】
「助けてもらった分、私も星良さんを支えたい。できることなら すぐ隣で。そう思ったとき、この形が一番 良いと判断しました」
淡々とした台詞なのに声音はどこか甘く、自分の指輪を見つめる瞳は優しかった。
あぁ、本当に星良のことが好きなんだな。そう、見ていて分かった。詞織もそれが分かったのか、目を輝かせる。
「……義兄さま……!」
「はい。今後ともよろしくお願いします」
詞織の心を一瞬で開いたのか。すごい。これが大人の男の為せる技。
しかし、その『義兄さま』呼び、星也が嫌がりそうだな。星也は姉にも妹にもシスコンだから。
けれど、『七海さん』と呼んでは、後々 星良もその苗字になるわけだから紛らわしい。
かといって下の名前で呼ぶのは論外だ。伏黒の方が許せない。
そうなると……やはり『義兄さま』か。これが一番良さそうだ。
「七海サンの兄妹とかめっちゃいいポジションじゃん! いいなぁ! あ、詞織! 俺と結婚しようぜ! そしたら、合法的に七海サンと兄弟に……!」
「冗談でも止めてください。詞織の隣は俺が予約してるんで」
星也からは高専を卒業するまで籍は入れないと約束している。だが、婚約は認めてくれているので、十八の誕生日を迎えたらすぐに申し込むつもりだ。
「猪野くん、二人は交際しています。不用意な発言は控えてください」
七海に嗜められ、猪野が「サーセンッ!」と気持ちがこもっているのかいないのか分からない謝罪を口にした。