第47章 長き決戦のオーバーチュア【渋谷事変】
「ただ待ってるだけなんてイヤだ! もしそれで誰も帰って来なかったら……僕は一生 後悔する――‼︎」
だから……置いていかないで……。
「……順平……」
虎杖が名前を呼び、次いで五条に視線が向けられる。伏黒たちも同じように五条の返事を待っていた。
沈黙が一秒にも一分にも、一時間にも思えた。
やがて五条は軽く息を吐くと、わしゃわしゃと順平の頭をかき混ぜる。
「分かったよ。順平は野薔薇と同じ班に入って」
「本気ですか? 一級任務に三級を参加させるなんて」
眉を寄せる伏黒に「仕方ないでしょ」と五条が笑みを深くする。
「順平の気持ちに共感はできないけど、理解はできる」
確かに、五条の場合は『待つ』側ではなく常に『見送られる』側だ。
「言っておくけど、無茶はしないこと。撤退も立派な戦術だよ。これは順平だけじゃなく、皆もね」
厳しい戦いになるのは間違いない。
でも、帰ってきたときに、皆が笑顔で「おかえり」を言い合えるように。
五条がちょいちょいと手招きをし、傍に来るようにジェスチャーをする。
首を傾げながらも虎杖が真っ先に動き、順平も続いた。伏黒が軽くため息を吐き、詞織は目を瞬かせ、釘崎は「何よ」と微かに眉を寄せる。
不意に五条はギュッと五人まとめて抱きしめてきた。
「うぉっ⁉︎」
「えっ⁉︎」
「ちょっと、何なんですか⁉︎」
「わぁっ⁉︎」
「セクハラで訴えるわよ⁉︎」
けれど、そんな順平たちに構わず、五条は優しげに口角を上げる。
「悠仁、恵、詞織、野薔薇、順平――……皆、信じてるよ」
* * *