第47章 長き決戦のオーバーチュア【渋谷事変】
「ま、五条先生の言う通りね。来たって足手纏い。下手するとあたしたちも巻き込まれかねないわ」
「八十八橋は運が良かった。何度も上手くいくとは限らない」
釘崎と詞織の言葉がのしかかり、何も言えない。目頭が熱くなるも、意地で涙を堪えた。
「順平、待っててくれよ。すぐ終わらせて帰って……」
「イヤだ」
虎杖の言葉を遮り、順平は五条を見上げる。
「呪術師に命の保証はない。八十八橋での任務でよく分かった」
怖かった。死ぬかもしれないと思った。逃げ出したかった。
けれど、皆が頑張っていたから……逃げずに戦っていたから……自分も逃げたくなかった。
「今回の任務は、何人も一級以上の術師がいて、五条先生も参加する」
ならば、虎杖たちが無事に帰って来られないかもしれない。
これまでの任務も命の危険がなかったわけではない。だが、今回の任務はこれまでのものと訳が違う。
脳裏に母の死体が蘇った。腰から下を失い、絶命した母の無惨な姿が。
「僕はもう……大切な人を亡くしたくない……!」
自分が行ってどうにかなる訳じゃないことは分かっている。
それで自分が死ぬかもしれないことも分かっている。