第5章 アレグレットに加速する心【自分のために】
「ありがとうございました。忙しいのにすみません」
ほら、と伏黒が詞織に手を差し出し、引っ張り上げた。
「むぅ……当てられなかった。火伏せの和歌しか使わせられなかった。悔しい」
あまり悔しそうには見えないのだが……声からは悔しさが滲み出ている。
「やっぱ、特級呪術師って強いんだな。五条先生とどっちが強いの?」
自称・最強を名乗る五条を思い出して尋ねると、星也は「あぁ」と顎に手を当てて考えた。
「そうだね……本気で呪術を当て合って戦ったことはないけど……五分――が限界だろうな」
「五分?」
首を傾げて問い返すと、星也が続ける。
「うん、そうだね。もし本気の五条先生を足止めしろと言われたら、五分が限界。百パーセント負ける」
「えぇ⁉ あんなに強いのに? 今、伏黒と詞織が二人がかりで戦って手も足も出ないくらい、コテンパンにしたのに?」
「オイ」
イラっとした顔で伏黒がこちらを見てくるが、気にしない。
すると、星良が「そりゃあ、そうよ」と話してくれた。
「呪術師も呪霊も、特級が一番上なの。一級の枠を少しでも超えたら特級。つまり、特級の中でも、人や呪霊によっては天と地ほどの差があるってわけ」
「僕と五条先生がいい例だ。僕の実力は、きっと五条先生の半分にも満たないんじゃないかな?」
ほぉ、と虎杖は感心する。