第5章 アレグレットに加速する心【自分のために】
再会が死体。
そんな非日常が日常として起こり得るほど、この世界は危険なのだと改めて実感した。
確かに、自分も死にかけた。
――「呪いに遭遇して普通に死ねたら御の字。ぐちゃぐちゃにされても死体が見つかればまだマシよ」
そう、星良も言っていた。
それに、入学の面談で、学長の夜蛾も。
呪術師は常に死と隣合わせ。
それは自分だけでなく、自分以外の人間もそうだ――と。
ある程度のイカレ具合とモチベーションが必要になる。
人を助けろという祖父の遺言がきっかけで、虎杖は呪術師となる道を選んだ。
けれど、夜蛾は『不合格』だと言った。
生半可な覚悟では務まらない。
――「君は、自分が殺されたときも、そうやって祖父のせいにするのか?」
あの夜蛾の言葉にはハッとさせられた。
覚悟なんて、後で追いついて来ると思っていた部分もある。
死ぬとき――自分はいったい何を思うのか。
それは今でも分からない。
自分の今あるだけの覚悟と、信念と、想い。
全てぶつけて、自分はここに立っている。
殺させない。それだけの力を身につければいい。
伏黒も、詞織も、何度だって助ける。
ギュッと、虎杖は拳を握りしめた。
やがて、伏黒は立ち上がり、頭を下げる。