第46章 夢は終わってダ・カーポ【これからの話/宵祭り】
「やれるわ、今のあたしなら」
目の前で消えていく命を一つでも減らしたい。
【星漿体】護衛任務で、なす術もなく目の前で黒井 美里を殺され、天内 理子を助けることができなかった。だから、自分は【反転術式】の習得に必死になった。それが使えれば、助けられる命は増える。
それでも、助けられない命だっていくつもあった。
自分は弱い。星也のように、できることは多くない……全てを助けるなんて不可能だ。
――分かっている。そんなことは。
できることはやる。
できないことはできるまで頑張る。
一人でできなければ、誰かを頼る。
それでもできないことは……できない。
けれど、これは……。
「まだ、あたしが頑張れる範疇だもの……‼︎」
――【反転術式 復元】
傷を治すために使っている【修復】ではない。それよりも上――失われた部分を元の状態に戻す術。
意識を少しでも逸らしたら失敗する。
集中して……空っぽになってもいい。呪力を絞り出す!
「うっ……はっ……」
ダメ! 呪力が足りない……‼︎
「はぁ……っ! 【清陽は濁陰に呑まれ、天は地に堕つ】」
呪力が増す――星也と一緒に決めた、禁言による呪力の“縛り”。それを解放したのは初めてだ。
やがて、腕や足に変化が見られた。ミチミチ…と音を立て、欠損した左腕や両足が復活していく。
「【反転術式――修復】」
右腕と両足が完全に復活したことを確認し、頭部に近い顔に筆で【修復】の文字を書きつけ、治療場所を切り替えた。損傷が激しく時間は掛かったが、どうにか傷口を塞ぐことはできたようだ。
思ったより時間がかかってしまった……。
ヒュー……と与から呼吸音が漏れ、星良は彼の心臓に耳を当て、首筋の動脈をとった。