第46章 夢は終わってダ・カーポ【これからの話/宵祭り】
「問題ないだろう。星良だって、実力を認められて準一級に上がったんだ。それに、何かあっても【反転術式】が使えるしな」
「それは、そうですが……」
「あんまり心配してると、侮っているように聞こえるぞ」
「いや、そういうつもりでは……」
別に、本当にそう思っているわけではない。伊地知が純粋に、彼女を心配しているだけだということは分かっている。
自分は【反転術式】が使えるだけで、星良たちのように前線で戦うことができない。いつも、怪我がなければいいと、術師たちを見送る側だ。
星良を、羨ましく思うときもあった。
けれど、自分が助けられなかった命と同じ数だけ……星良もまた、多くの命を前に涙を流すこともあっただろう。
戦場にいる分、もしかしたら自分以上に、目の前で命が尽きる瞬間をいくつも目の当たりにしているかもしれない。
だから、星良は【反転術式】の腕を磨き続けた。
「心配するな。アイツも呪術師だ。覚悟なんてとうにできてるだろ。それに、星良ならたとえ腕が吹き飛んだってどうにかするさ」
「う、腕が……⁉ いや、そしたら星良さんは術式が……」
そう。文字に特化した術式を使う以上、星良は腕を失えば文字を書くことができず、術式も失われる。それでも――……。
「星良の【反転術式】は、とっくにあたしを超えてるよ」
悔しさなど微塵も感じさせない、誇らしげな笑みを浮かべれば、伊地知はきょとんとした表情をしていた。
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