第46章 夢は終わってダ・カーポ【これからの話/宵祭り】
『ごめんなさい、硝子さん。また任務が入っちゃって……今日のご飯、行けなくなっちゃいました』
電話の向こうで申し訳なさそうな声で謝る星良に、家入は「そうか」と返した。
「結構 楽しみにしてたんだがな。誕生日に七海からプロポーズされたんだろ? 念願 叶って想い人と婚約したんだ。色々 聞きたいことは山ほどあるのに、お互い中々 時間が取れなかったからな」
『あ、今日のお誘いって、もしかしてそれが目当てでした?』
まぁな、とおどけたように笑ってみせる。
長期任務を終えたばかりで疲れているだろうに、それを感じさせない溌剌とした声音。心配させないようにと気を遣っているのだろうか。
本当に、自分の弟子は周りに気を使いすぎだ。
だが、それを指摘するような野暮はしない。それが、星良の性分なのだろう。
『お手柔らかにお願いしますね。あんまり色々 喋っちゃったら、七海さん嫌がりそうですし』
「だろうな。だが、オマエの恋愛相談には散々 乗ってやったんだ。聞く権利くらい少しはあるだろ」
『そうですね。じゃあ、「考えておきます」ってことで』
それでは、と話を切り上げようとする星良に、家入も「また連絡する」と返して通話を切った。
「星良さん……大丈夫ですか?」
「ん? 何が?」
伊地知に言われ、家入は気だるげに返した。
「星良さんに同行している補助監督の新田さんから連絡がありました。内通者である準一級術師の捕縛。まだ学生のようですが、前衛向きの術師です。星良さんの術式を考えると分が悪いように思えて……」
確かに、星良の術式は汎用性こそ高いが、後衛で真価を発揮するものだ。
呪符にあらかじめ術式を仕込んでおくことで、【書字具現術】の最大の弱点である“書く”という動作を省くことはできるし、自分にあらかじめ術式を仕込んでおくこともできるが、そこは変わらない。