第5章 アレグレットに加速する心【自分のために】
「よく動けるようになってる。二級呪術師としての腕前も問題ない。ただし、今回 二級呪霊を相手に、二級呪術師が二人もいて遅れをとった事実は看過できない」
グッと言葉を詰まらせる伏黒と詞織。
誰から話を聞いて彼――いや、星也と星良が知ったのかは問題じゃないだろう。
緊張した空気の中で、バサッと音を立てて、鵺が伏黒の背中に降り立った。
「一瞬の判断の誤りが命を落とす結果になる。それは詞織かもしれないし、恵かもしれない。当然、二人とも分かっているよね?」
「「はい」」
顔を伏せる二人に、星也は厳しく続ける。
「次は失敗しない。次は負けない。大事なことだよ。でもね、戦場じゃ、常に〝次〟なんてないんだ。失敗も負けも、その時点で死を意味する。今回は虎杖くんの機転でどうにか乗り切れたけど……」
そこまで言って虎杖を見ると、星也は「いや」と小さく首を振った。
伏黒は悔しそうに眉を寄せ、詞織も涙を堪えるように唇を噛む。
「とにかく、再会が死体なんてゴメンだ。少なくとも、二人には僕より先に死ぬなんて真似はしないでもらいたい。そのためにも、もっと強くなってもらわないと」
あ、と虎杖は言葉を呑み込んだ。