第46章 夢は終わってダ・カーポ【これからの話/宵祭り】
『拡充比正常――知覚フィールドバック遮断』
音声アナウンスに、与は舌打ちをする。
【帳】が下りている――おそらく、夏油の仕業だろう。電波も遮断されているところをみると、自分を閉じ込めるだけではない。
「五条 悟のようにはいかないな」
きっと、彼ならこの状況も余裕で打破できるのだろう。
そう、この戦いの勝利条件は――五条 悟だ。
どんな手段でもいい。五条 悟と連絡を取り、渋谷の計画を伝え、保護してもらう。
だが、【帳】とそれを下ろした夏油に集中するには……真人を無視はできない。
――まずは真人を祓う。
夏油へ視線を向ければ、「どうぞ、お気になさらず」と微笑すら浮かべている。
依然 劣勢……だが、勝算はある。
傀儡を通して、全て視てきた。
虎杖と真人の戦い、三輪の【シン・陰流】、八十八橋での伏黒と特級呪霊の戦い、詞織が呼び出した【特級過呪怨霊】神ノ原詩音、両面宿儺の【領域展開】――……全て、視てきたのだ。
ちらりとデジタル画面を見る。
――十七年五ヶ月六日。
自分を縛った年月――それで得た呪力……出し惜しみはしない。
脳裏に同期――三輪 霞の姿が過ぎる。
気が合っていたのか、何となく一緒にいることが多かった。
事あるごとに声をかけ、頼ってくれていて……もしかしたら、彼女も同じように思ってくれていいだのだろうか。
そんな都合のいいことを考えてしまう自分がいた。