第46章 夢は終わってダ・カーポ【これからの話/宵祭り】
「――遅かったな。忘れられたかと思ったぞ」
「そんなヘマはしないさ。呪縛の恐ろしさは君が身をもって知っているだろう」
『相変わらずカビ臭くてヤんなるね』
メカ丸――否、与 幸吉の視線の先に、二人の男が現れる。袈裟服の男・夏油 傑とツギハギ顔の男・真人だ。
『もう敵なんだからちゃっちゃと殺しちゃおうよ』
「まだ駄目だよ、真人。殺すのは治した後だ」
与は夏油たちに協力し、情報を提供する対価として、真人の【無為転変】で身体を治す。そういう“縛り”を彼らと結んだのだ。
傀儡の操作範囲も、実力以上の呪力出力も――望んで手に入れた力ではない。
こんな身体……肉体が戻るのならなんだってやる。
呪術を差し出しても、皆を裏切ることなっても……。
「彼には渋谷でも働いてほしかったけど……仕方ないね」
「『京都校の人間には手を出さない』――先に“縛り”を破ったのは貴様らだろう」
交流会で奴らの仲間が京都校の生徒を――仲間を巻き込んで襲撃事件を起こした。
加茂が襲われて重傷を負い、東堂も特級呪霊と会敵した。
明らかな契約違反だ。
『やったのは花御だもーん! 八つ当たりはやめてほしーなぁ!』
茶化すように嗤う真人に苛立ちを覚えるも、軽く舌打ちをして話を進めることにする。
「呪霊と議論する気はない。さっさと治せ――下衆」
低い声で言うと、真人が嘲るように笑みを深くした。
『勢い余って芋虫にしちゃいそう』
「真人。他者間との“縛り”は自らが自らに科す“縛り”とはわけが違う」
その違いの一つに、ペナルティの不確定さがある。自分の中の“縛り”は破ったところで得たもの――向上した能力などを失うだけ。