第46章 夢は終わってダ・カーポ【これからの話/宵祭り】
「お喋りはそこまでよ。この地下にメカ丸の本体――与 幸吉がいます」
「メカ丸で間違いないの?」
詞織が問うと、歌姫が首を左右に振る。
「あの子が怪しいんじゃなくて、誰も怪しくないから消去法でメカ丸なの」
――【傀儡操術(かいらいそうじゅつ)】
傀儡の操作範囲は、【天与呪縛】の力で日本全土に及ぶ。
さらに、実力以上の呪力出力。
「登録していない傀儡があれば、内通者としての仕事はいくらでもこなせるからね」
「そう? あの人、結構 目立つと思うけど」
見たら絶対に忘れないインパクトがあるし。
「傀儡が蝿や蚊のようなサイズだとしたら?」
「あ、そうか。あの見た目のヤツだけとは限らないんだ」
順平と一緒に虎杖も「そっか」と納得する。
やがて、「ココよ」と歌姫が一つの扉を指し示した。
膝から下の肉体、腰から下の感覚がないため、自分で動くことができないらしい。
「逃げられる心配はないってことか。攻撃にだけ集中してればいいのかな」
「理屈はそうかもしれねぇが、油断するなよ。相手は準一級。呪霊相手だと考えると一級か、下手すると特級クラスだ」
順平に伏黒が警戒を促す中、虎杖は呪力を滾らせ、拳を放った。
バゴッと派手な音を立てて扉が吹き飛ばされる。全員で部屋へ乗り込み、虎杖たちは足を止めた。
「……無人……」
「誰も、いない……」
詞織と順平が室内を見渡す。虎杖も部屋を見たが、何かの装置が破壊されていた。
連れ攫われたのか……それとも、自ら傀儡を操作して脱出したのか。
「……えーっと……」
「やられたわね」
虎杖が歌姫を見ると、悔しそうに歯噛みをした。
「でも、逆に」
「これでメカ丸で確定かしら」
伏黒と釘崎に虎杖も頷く。
「捜索しますか?」
順平が尋ねると、彼女は首を左右に振る。
「いいえ、もういいわ。伏黒君の術式も、捜索範囲が絞れていないんじゃ探しようがないでしょ。ここは引き継ぎましょう」
「引き継ぐ? 誰に?」
詞織が首を傾げると、歌姫は微かに自信に満ちた笑みを浮かべた。
「準一級術師――神ノ原 星良。神ノ原さんのお姉さんよ」
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