第46章 夢は終わってダ・カーポ【これからの話/宵祭り】
五条を起こすことに成功し、高そうな椅子を虎杖や釘崎と堪能した順平は、パチンッと手を打って場の空気を切り替えた五条に向き直った。
「はーい! じゃあ、皆さんに嬉しい話が二つと、真面目な話が一つありまーす! どっちから聞きますかー?」
「どっちでもいい」
「同じく」
「同意」
淡白な伏黒の返答に詞織と釘崎が続く。本当にどうでもいいのか、三人はどこまでも無表情だ。
「えぇ〜? せっかくだし嬉しい話から聞こうぜ。な、順平」
「え、僕は……」
正直に言えば、順平も特にどちらでも構わないのだが……なんとなく言い出しづらい。
「悠仁は素直だね。じゃあ、リクエストにお答えして……じゃじゃーん!」
ものすごくハイテンションに、五条は一枚の紙を取り出した。
「このたび、順平が三級に昇級しましたー! はい、皆 拍手〜!」
「えぇっ⁉︎」
いきなり話の矛先が向き、思わず動揺する。
「すげぇじゃん、順平! やったな‼︎」
肩を組んで虎杖が自分のことのように喜んでくれた。
伏黒がため息を吐きながらもパチパチと軽く拍手をしてくれ、その隣では詞織も「おめでと」と小さく言って拍手をしてくれる。
釘崎は「おおげさね」と言いながらもどこか表情は柔らかい。
「でも、どうして……何か評価されることありました? 僕、別に何も……」
「八十八橋の一件、聞いてるよ。特級 祓ったでしょ」
五条に言われて思い出す。あの変態的な格好の兄と血の涙を流す異形の弟の二体の呪霊を。
「いや……それなら僕は何もしてない。祓ったのは詞織ちゃんで、僕は大したことは……」
恐ろしくて逃げることすら頭を過ったし、結局 トドメをさしたのは詞織だ。
けれど、五条は珍しく「順平」と真面目な顔で呼んできた。