第45章 君へ捧げるレクイエム【呪術廻戦0】
「呪いをかけた側が主従制約を破棄した。かけられた側がペナルティを望んでいなければ、解呪は完了だ。彼女の姿を見れば、分かりきったことだよね」
そっと星也が肩に触れるも、乙骨はその場に崩れ落ちた。
「……全部、僕のせいじゃないか! 全部っ! 全部、僕が……ッ‼」
里香をあんな姿にして、たくさんの人を傷つけて……自分が夏油に狙われたせいで真希が、パンダが、狗巻が死にかけ……他にもたくさんの術師たちが巻き込まれた。
おそらく、百鬼夜行で命を落とした者もいるはずだ。
『――ありがとう、憂太』
頭を抱える乙骨を、柔らかな腕が抱きしめてくれた。
『時間をくれて。ずっと傍においてくれて。里香はこの六年が、生きてるときより幸せだったよ』
身体を離し、里香の小さな手が頬に触れ、目を合わせる。
『バイバイ、元気でね。あんまり早くこっちに来ちゃダメだよ』
「……うん」
鼻をすすりあげ、里香に頷いた。
「またね、里香ちゃん」
里香の身体が淡い光を放ち、少しずつ輪郭が解け、無数の光となって吸い込まれるように空へ昇っていく。
その幻想的な光景を、乙骨は瞬きすら惜しむように見つめ、静かに涙を流した。
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