第45章 君へ捧げるレクイエム【呪術廻戦0】
「今さらだが、夏油さんの件は君に非はない。憂太がいなくても、彼は必ず高専に来た」
翌朝、乙骨は五条、星也と一緒に高専の敷地内を歩いていた。
「そうそう。アイツ、妙に星也にもご執心だったしね」
「違うでしょ。夏油さんの目的のためには、高専を押さえておく必要があったはずです」
うーん……そうだろうか。
「あ、そういえば……星也さん、いつから僕の名前……」
「認めてくれたんだよ。コイツはね、自分の内側に入れた身内と親しい相手のことは下の名前で呼ぶんだ。ね、星也」
「いちいち言わないでくださいよ」
顔を顰める星也に、五条が肩を震わせて笑う。
確かに、真希やパンダ、狗巻のことは名前で呼んでいた。自分も認めてもらえたのか。
「あぁ、それからコレ!」
ピシッと五条が懐からカードを取り出し、乙骨に渡す。
「あっ、僕の学生証。先生が拾ってくれてたんだ」
しかし、五条は「いや、僕じゃない」と否定した。
「親友だよ。たった一人のね」
いつものおちゃらけた雰囲気はなりをひそめ、優しげな声音に首を傾げると、星也もどこか柔らかな表情をしている。
「星也さんも知ってる人ですか?」
「あぁ。とても世話になったからね」
へぇ、と相槌を打つと、遠くから真希に名前を呼ばれた。
「オイ、憂太! いつまで待たせんだ! 行くぞ‼︎」
そこには、同級生の真希やパンダ、狗巻、それに担任の日下部も揃っている。
憂太は「ごめん」と少しだけ眉を下げ、星也に新しくもらった刀を背負い直した。
新しく新調した高専の黒いスタンダードな制服に身を包んだ自分を改めて見下ろす。
気を引き締める乙骨の指には、里香との絆の証である婚約指輪が光っていた。