第45章 君へ捧げるレクイエム【呪術廻戦0】
「え……里香ちゃん?」
幼い頃、死に別れたときと同じ姿だ。
突然の事態に戸惑っていると、パチパチと乾いた拍手の音に振り返る。
大きく砕かれた塀から、綺麗な顔立ちの白髪頭の男が拍手をしながらやって来た。その後ろには星也の姿がある。
「おめでとう。解呪達成だね」
「星也さん、と……」
「「「誰?」」」
「グッドルッキングガイ、五条 悟先生ダヨ~」
皆と揃って首を傾げる乙骨に白髪頭の男――五条が白けた顔をする。
へぇ、あの包帯の下はこんな綺麗な顔だったのか。
休みの日も暗いサングラスをかけていていたから、素顔を見るのは初めてだ。
「前に憂太が仮説を立てただろ」
――「もしかしたら、呪いをかけたのは里香ちゃんじゃなくて……」
「……――自分だったのではないかと」
それで、五条が乙骨の家系を調べたのだと星也が教えてくれた。
里香の方は随分 前に終了していたが、乙骨の方はザルもいいところだったらしい。そして、判明したのだそうだ。
「君、菅原 道真の子孫だった! 超遠縁だけど、僕の親戚‼」
「「スガッ⁉」」
いぇい、いぇい! と両手でブイサインをしながら満面の笑みを見せ五条に、真希たちが目を見開く。
「え、誰?」
「日本三大怨霊の一人」
「超大物呪術師だ」
「ツナ」
ドン引きするクラスメイトたちに、どういう表情をしたらいいのか分からない。
「憂太が正しかった。里香が君に【呪い】をかけたんじゃない。君が里香に【呪い】をかけたんだ」
五条の言葉に、乙骨は里香が死んだ日のことを思い出した。
――「里香ちゃん! どうしよう! 死んじゃうの⁉ 助けなきゃ!」
――「死んじゃダメだ! 死んじゃダメだ! 死んじゃダメだ! 死んじゃダメだ‼」
そうだ――あの日……里香が死んだ日……自分は里香の死を拒んだ。
里香の小さな身体が吹き飛んだのも、血がたくさん流れるのも、光を失った瞳も――……受け入れられなかった。信じたくなかったんだ。