第45章 君へ捧げるレクイエム【呪術廻戦0】
「【弾け】!」
星也の放った刃が尾を弾く。そこへさらに「【散】」と言霊を重ねれば、刃が無数に分かれ、玉藻前を切り裂いた。
消滅する玉藻前に目を丸くした夏油が、すぐに肩を竦める。
「強くなったね、星也君。まさか秒速で祓われるとは思っていなかったよ。だが……さすがに、力を出し切ったんじゃないかい? もう、これを防ぐ余力はないだろう?」
――【呪霊操術 極ノ番『うずまき』】
幾多の呪霊が合わさり、折り重なり、おぞましい呪力を伴い、大きな渦を巻いて夏油の背後に現れた。
「なんだ、これは……」
「私が今 所持している四四六一体の呪霊を一つにした。乙骨、君が【折本 里香】を使いこなす前に殺しにきてよかった」
夏油の視線が星也をすり抜け、乙骨に向けられる。
そんな……仮に三級や二級だけだったとしても、四〇〇〇体以上も合わされば強大な力になるだろう。
だが、夏油は元・特級呪術師。一級以上も相当数を取り込んでいるはず。
「逃げろ、憂太! 君を死なせるわけには……!」
五条に頼まれているからだけではない。目の前で誰かが死ぬところなど見たくない。見知った仲ならなおさら。
だが、乙骨は逃げるそぶりを見せることなく、静かに一度 瞼を閉じた。そして、おもむろに振り返り、里香を抱きしめる。