第45章 君へ捧げるレクイエム【呪術廻戦0】
「……やるじゃないか」
膝をつく夏油に、乙骨は「分かんないよ!」と叫ぶ。
「お前の言ってること、全然 分かんない! 高専以外の呪術師のことなんか知らないし! お前が正しいかどうかなんて、僕には分かんない! でも――ッ‼」
グッと【天枢】を握る乙骨の手はカタカタと震えていた。
「僕が皆の友だちでいるために! 僕が! 僕を! 生きてていいって思えるように――……」
乙骨が夏油を見据える。
「――お前は殺さなきゃいけないんだ‼」
そこに、最初に会った頃のような気弱さはなく、力強く、殺意に満ち溢れた鋭い眼差しだ。
脳裏に、夏油と初めて会った日のことが過ぎる。一緒に【星漿体】――天内 理子の護衛任務につき、守ることができず、己の弱さに打ちひしがれた。
いつも子ども扱いされてイラつくこともあった。それでも、彼の穏やかな声音に安心感を覚えていたのも事実だ。
一緒に任務に行って 助けてもらったこともあるし、何度も稽古につき合ってくれた。
五条と一緒になって振り回されることもあったが、それも今となっては楽しい思い出だ。
彼の強さや優しさ、志に憧れていた。いつか追いつきたい目標の一つでもあった。
――どうして、こんなことに……。
そう思わずにはいられない。
でも――……。
「自己中心的だね。だが、自己肯定か。生きていくうえで、これ以上に大事なこともないだろう。ならば、こちらも全霊をもって君を殺す」
星也君、と夏油から名前を呼ばれる。