第45章 君へ捧げるレクイエム【呪術廻戦0】
「だから、僕は何度だっていいます。僕たちは呪術師だ。理不尽を強いる人間は確かに存在する。それでも守るのが僕たちの役目だ」
「……ここまでくると、さすがに鬱陶しさを感じるな……」
結構です、と言って、【天枢】を剣にし、夏油に迫る。ガンッと剣と三節棍が競り合う。だが、消耗から力が入らず、ジリジリと後退していく。
「押し負けているよ」
「――【剛腕】」
言霊の力でグッと力が入り、星也の【天枢】が三節棍を弾いた。そのまま回し蹴りをし、夏油を吹き飛ばす。
「【呪言】……いや、【陰陽術式】だと【言霊】と言うんだったか」
「やっていることは同じです」
深く息を吐き、後方へ視線を向けた。『憂太、憂太ぁ』と里香が呼びかける声が耳に届く。もしかしたら、少し意識を飛ばしかけたか。
「憂太、無事か?」
「はい。慣れてきました」
グッと刀を握り直し、里香の腕から憂太が飛び降りる。軽くその場で何度か跳ね、乙骨が地面を蹴った。
先ほどよりもスピードが上がっている。
夏油が応戦しようと三節棍を構えるが、それより先に乙骨が彼の背後をとった。
刀に呪力が込められる――いや、あれは。
「ダメだ、憂太!」
斬り上げた乙骨の刀が夏油に届く前に崩れる。
「ダメじゃないか、急にそんなに呪力を込めちゃ。器がもたない。悟や日下部さんに教わらなかったかい? 呪力は少しずつ――……」
「使え!」
夏油が話し始めたときには、星也は神剣【天叢雲剣】を下ろした【天枢】を乙骨へ投げていた。
【天叢雲剣】は器が大きい。少々 乱暴に呪力を流しても受け止めてくれる。
乙骨が【天叢雲剣】に呪力を流し、夏油へ斬りつけた。
バチバチッと黒い火花――【黒閃】が爆ぜ、夏油が吹き飛ばされる。
とっさの判断で身体をずらして致命傷は免れたものの、夏油の身体には深く一閃が刻まれていた。