第45章 君へ捧げるレクイエム【呪術廻戦0】
「【帳】が……」
高専に到着すると、そこには【帳】が下りていた。穴が空いているようだが、これはパンダや狗巻が空けたものだろう。
穴から中へ入ると、ビリビリとした呪力の気配を感じた。この呪力……【折本 里香】が顕現しているのか。
そこで、真希たちの姿が見えないことに気づく。
「【闇に失せし者、月に隠れし者、星に紛れし者。この名を縁(よすが)とし、我に汝の行き先を示せ。急々如律令】」
白紙の札に真希の名前を書いて【失せ物探し】の術を発動する。術が正常に発動したことに安堵し、星也は札を追いかけた。
「真希! パンダ! 棘!」
上空から【白虎】に乗り、建物のベランダに当たる部分に寝かせられた三人を見つける。呼吸は安定しているようだ。気を失っているだけ。
家入は新宿で医療班の指揮をとっており、高専にはいない。【反転術式】を使ったのは間違いなく乙骨だろう。
「まさか、呪術を学び始めて半年で【反転術式】を他者に使えるなんてな……」
だが、感心している時間はない。
「はぁ……」
身体が怠い。
京都での戦闘に加え、長距離の移動――呪力を消耗しすぎだ。
――ド――――ンッ‼︎
地面を揺らす轟音に振り返り、「あそこか」と呟き、引きずるようにして身体を動かし、【白虎】に乗る。
辿り着くと、そこでは里香を連れた乙骨と三節棍の呪具を操る夏油が戦っていた。ガンガンッと激しく打ち合う音が鼓膜を震わせる。
打ちつけられた三節棍に体勢を崩した乙骨へ、夏油が畳み掛けた。
「“憂太”‼︎」
星也の呼びかけに夏油の動きが止まる。その隙を見逃すことなく、乙骨が斬りつけた。だが、それも紙一重で飛び退くように避けられる。