第45章 君へ捧げるレクイエム【呪術廻戦0】
「クッ……!」
「ミゲル⁉︎」
案じるように菜々子が呼びかけるも、駆け寄る様子はない。
近づいて巻き込まれるリスクを恐れたのか。それとも、五条の気迫に動けなかったのか。
「美々子、あとどんくらい?」
「ノルマまであと十分ちょっと……」
「ミゲル、ちょっと死にそうじゃない? でも、加勢とか絶対ムリだし」
「任せていいんじゃない。わたしたちじゃ加勢にもならない。というか、巻き込まれて死ぬ前にここを離れた方がいいかも」
「死ンダラ祟ゾ、夏油‼︎」
冷やかすような菜々子と美々子の言葉が聞こえたのか。ミゲルが恨めしげに叫ぶ。
そんなやりとりを無視し、五条は高専のある方へ視線を向けていた。
「……あれから十分は経ってる。星也は高専についてる頃か」
そういえば、乙骨たちのフォローのために、星也を高専へ送り込むべく電話をしていた。それも、ミゲルと戦いながら。
星也もいつも無茶を言われて可哀想に……まだ学生なのに、気苦労の絶えないことだろう。
そこへ、ミゲルの縄が唸るように五条を襲った。それを飛び退くことで避ける。
「余所見シテルト死ヌゾ」
「やれるモンならやってみろよ」
冷ややかに見据える空色の【六眼】に、伊地知にはミゲルの息を呑む気配が伝わった気がした。
* * *