第45章 君へ捧げるレクイエム【呪術廻戦0】
「ミゲル⁉︎ アンタ、何してんの⁉︎」
「見テ分カレ!」
あの褐色の肌にサングラスの男――ミゲルという名前らしい。五条が警戒していた異国の術師だ。
身を起こそうとするミゲルの後ろに、「しぶといな」と低い声で五条が現れる。
振り向きざまに長い縄で五条を弾いた。パァンッと弾かれた彼は手を振る仕草をしている。
そんな……五条は常に【無下限呪術】を発動し、自身の肉体を傷つけるような攻撃は通らないはすだ。
「その縄……珍しい術式が編み込まれているな。こっちの術式が乱される」
そうか。あの縄が【無下限呪術】を乱すことで攻撃が通るのか。
だが、当てればその分 消費するようで、縄自体の長さはだいぶ短くなっているようだ。
「モウ半分モ残ッテナイガナ! コレ一本編ムノニ俺ノ国ノ術師ガ何十年カケルト思ッテイル⁉︎」
「知るか。僕の一秒の方が勝ってる。それだけだろ」
そこへ、強い呪力を感じ、そちらへ視線を向ける。民家より大きな巨体を持つ毛むくじゃらの呪霊――おそらく、一級相当。
『ばぁば』
「邪魔だ」
低い声音で、五条が赤いエネルギー体を弾く――【術式反転『赫』】だ。バシュッと瞬く間に呪霊が消し飛ばされ、伊地知は二人の少女や異国の術師と共に顔を青ざめさせた。
あれが【無下限呪術】。原子レベルに干渉する緻密な呪力操作で空間を支配する術式。そして、五条はそれを可能にする【六眼】を持って生まれた最強の術師だ。
その五条が……キレている。
おそらく、早く乙骨たちのために高専へ駆けつけたいのに、足止めを食らって殺気立っているようだ。自分に向けられた怒りではないのに、手足が震える。
ミゲルが縄で換気扇を持ち上げ、五条に向けて投げつけた。それは五条に触れる直前で破壊される。五条の【無下限】だ。
さらにミゲルが足早に迫り、縄で五条を弾く。それに応戦し、五条の拳や蹴りが炸裂した。体術は同レベル――いや、五条の方が勝っている。
五条の長い足から繰り出された飛び蹴りに、ミゲルがこちらへ吹き飛んできた。