第44章 決戦のアッチェーソ【呪術廻戦0】
「な……っ⁉」
目を見開いたときには、呪霊が弾き飛ばされ、ビルの壁に激突する。
「つー……っ! 硬(かて)ぇな……っ!」
片手を振りながら、日下部が刀を握り直した。
「日下部さん!」
「おー、無事か。よかった よかった」
気の抜けたような声音に、肩の力が抜ける。
「……コイツ、特級か。最悪だな。上手く低級をいなして回って、そのまま終わってくれればって思ってたんだがなぁ……」
そう言いつつも、彼は刀を鞘に納め、居合の構えをとっていた。隙が全くない、すぐにでも刀を抜きそうな怜悧な雰囲気を纏っている。
起き上がった呪霊がグァッと口を開いて呪力を放射しようとしたところへ、黒い鳥が体当たりをして体勢を崩させた。
「おや、伏黒君に詞織ちゃん。久しいね。救出のお代は後で星也君に請求するとしよう」
「冥さん……!」
詞織が目を丸くして呼ぶ。
一級術師の二人の救援――だが、喜ぶのはまだ早い。目の前の特級は物理攻撃を通しにくい……ということは、二人とも相性の悪い相手だ。
「詞織、恵!」
「姉さま!」
「星良さん!」
大きく手を振ってくる姉の姿に、詞織が目に見えて喜びの表情を見せた。星良の後ろには、一級術師の七海と、準一級術師の灰原の姿もある。
「後ろ、怪我人がいるのね。見せて」
すぐに状況を察し、星良は怪我をしている術師に【反転術式】をかけ始めた。