第44章 決戦のアッチェーソ【呪術廻戦0】
「【瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ】」
ゴウッと唸るように激流が迸り、呪霊を押し流しながら祓う。
「――【鵺】」
バサッと羽を鳴らし、電撃をまとった【鵺】が上空から襲ってくる呪霊を消し飛ばした。
「はぁ……疲れた」
「詞織、休むか?」
ふらつく詞織を伏黒は支える。
詞織には、世界へ呪いを吐き続ける詩音がいることでもたらされる、底なしの呪力がある。
だが、呪力があっても、体力や気力は削られる。ずっと戦い通しで緊張状態も強いられているし、集中力も限界だろう。
「ヘーキ。キツいのはわたしだけじゃない」
伏黒を押しやり、詞織は新たに襲いくる呪霊の前に立った。
せめて、怪我をしている術師たちを安全な場所へ移動させるか、治療するかできればいいのだが……庇いながら戦うのにも限界がある。
そこへ、悍ましいほどの呪力を持った呪霊が、地響きを鳴らしながらやってきた。
「この気配……!」
「くそっ! とうとう特級のお出ましか‼︎」
まともに戦って勝てる相手ではない。
逃げようにも、負傷した術師たちを残しては行けない。
「詞織、下がれ!」
自分がやるしかない。詞織を後ろに押しやり、【鵺】の術式を解くと、腕を伸ばして構えた。
「【布瑠部(ふるべ) 由良由良(ゆらゆら)――……】」
詞織は俺が……たとえ、命を落とすことになっても……。
「メグ……?」
立ち上る呪力の気配に、詞織が息を呑む気配が伝わる。
「――【シン・陰流 簡易領域――『抜刀』】!」
地面を踏みしめる音が耳に届いたと思うと、ザンッと呪霊が斬撃によって弾かれた。