第44章 決戦のアッチェーソ【呪術廻戦0】
『やってみなさいよ。できるものなら。でも、たとえあなたがどれほど詞織を想おうと、詞織が愛しているのはこの あたし。あなたが一番に想われることはないわ』
「関係ない。俺が勝手に惚れてるだけだ」
そう言ってのけると、詩音は不愉快そうに眉を寄せ、『鬱陶しい男』と言い残して目を閉じた──同時に彼女の細く小さな身体が傾ぎ、慌てて受け止める。
「……メグ……?」
「詞織、大丈夫か?」
吸い込まれそうな夜色の瞳に、伏黒はほっと安堵の息を吐いた。詞織は辺りを見渡し、呪霊がいないことを確認して肩の力を抜く。
「詩音……ありがとう。約束も守ってくれたんだね」
柔らかな表情は、双子の姉に向けられたもの。自分の力で守れなかったことに無力感が募る。
「詩音、強かった?」
「悔しいけどな。でも、俺も強くなる。あれくらい、簡単に祓えるように」
「そうだね。あたしも」
また新手が伏黒たちの前に立ちはだかる。息を吐く暇もない。
それでも……負けられないヤツがいる。
「詞織、まだやれるか?」
「もちろん。何度も詩音に頼っていられない。わたしだって……」
怪我をした術師たちを背に庇い、伏黒たちは新たに現れた呪霊へ構えた。
* * *