第44章 決戦のアッチェーソ【呪術廻戦0】
『最後にお前が残ったのね。詞織を傷つけた呪霊──お前はあたしが直接 祓ってあげるわ』
詩音が大きな人の手とギョロリとした一つ目の呪霊を睨みつける。
『【神羅万象とあまねく諸仏に帰依し奉る】』
――東方より来たりし毒あらば、降三世明王(ごうざんぜみょうおう)の加護にて滅ぼし給え。
――西方より来たりし悪鬼あらば、大威徳明王(だいいとくみょうおう)の加護にて圧伏させ給え。
――北方より来たりし怨敵あらば、金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう)の加護にて降伏させ給え。
――南方より来たりし災厄あらば、軍荼利明王(ぐんだりみょうおう)の加護にて打ち祓い給え。
――中央より来たりし邪気あらば、不動明王の加護にて消し去り給え。
『【祓い給え、清め給え。忿怒の相にて邪悪を退け、災難辛苦を滅ぼし、五大明王の名の下に我を勝利へと導かん】!』
呪霊の前後左右──東西南北と中央の位置に仏神の種字が現れ、目を覆うほどの強烈な光と共に呪霊は音もなく消滅した。
『あら……一瞬で消し飛んでしまったわ。もっといたぶって苦しめるつもりだったのに』
落胆したようにため息を吐く詩音に、伏黒は奥歯を噛み締める。自分と詞織では歯が立たなかった呪霊を、こうもあっさり祓うとは……それでも。
「いつか、俺がオマエを祓って、詞織を解放する。たとえ、どれだけの時間がかかっても、それだけの力を手に入れる」
射抜くように睨みつけると、詩音は声を立て、『あははははっ!』と肩を震わせて嘲笑した。