第44章 決戦のアッチェーソ【呪術廻戦0】
「灰原さん、傷を」
「ありがとう」
灰原の召喚した【酉鬼】が、大きな翼で星良たちを包み込む。その後ろから、星良は灰原の傷を治し、七海の戦いを見守った。
七海が襲いくる呪霊を鉈で斬り裂くと、黒い火花が弾ける。仰け反った呪霊が尾をしならせた。
そこへネクタイを巻いた拳が打ち据えられる。それも、二度三度と七海が殴りつけるたびに黒い火花が弾けた。
「【黒閃】があんなに――すごい!」
「やっぱ強いな、七海は!」
誇らしげな灰原に、星良も頷く。
怒り狂った呪霊が七海の背後をとった。だが、最後は振り抜きざまに放たれた【十劃呪法】により、呪霊は斬り裂かれる。一際 大きな【黒閃】の黒い光の中で、呪霊は塵となって消滅した。
――四回。【黒閃】の連続発生、過去最高記録だ。
ブンッと鉈を振り、七海が駆け寄ってくる。
「星良さん、怪我は?」
「あたしは大丈夫です」
「七海〜、僕には聞いてくれないの?」
「あなたが星良さんの治療を受けているのは見ましたから」
至極 真面目な顔で七海が返すと、灰原も「なるほどね」と手を打った。緊張感のないやり取りに、星良は思わず笑ってしまう。
「あ、七海が戦ってる間に【折神】補充したよ。まだまだいける!」
「あたしも。こんなとこでへばってらんないわ」
「灰原、星良さん。もう少し先は長そうです。気張っていきましょう」
眼鏡を押し上げて先頭を行く七海に、星良は灰原と力づく頷いた。
* * *