第44章 決戦のアッチェーソ【呪術廻戦0】
「【玉犬】、合わせろ!」
――浦見東中学三年 二級呪術師 伏黒 恵
黒と白の二匹の犬が伏黒に並走する。伏黒は地面を踏み締めて跳躍し、呪霊に飛び蹴りを食らわせた。体勢を崩したところへ白の【玉犬】が爪で引き裂き、黒の【玉犬】が食らいつく。
祓われた呪霊を確認する伏黒に大きな影が落ちた。振り返ったときには回避行動をとるのも遅く、伏黒は攻撃を受ける覚悟を決める。
「――【春の日も 光ことにや 照らすらむ 玉ぐしの葉に かくるしらゆふ】」
真っ白な光が、伏黒を襲おうとした呪霊を消し飛ばした。「メグ」と名前を呼ばれて振り返る。
「メグ、大丈夫?」
――浦見東中学三年
三級(二級審査中)呪術師 神ノ原 詞織
「俺はな」
そう返し、伏黒は背後を見た。そこには、怪我で動けなくなった三級や四級の術師が仲間と身を寄せ合っている。
式神で運んでやりたいところだが、呪霊の進行が止まらず、身動きがとれない状態だ。
「姉さまに連絡を……」
「さっき入れた。他の術師の治療で、もう少しかかるらしい」
そっか、と無表情に相槌を打つ詞織だが、そこにもどかしさが見て取れるのは、つき合いが長いからだろう。
そこへ、ズンッと肩に重く濃い呪力の気配がのしかかる。
「なんだ、この呪力⁉︎」
気配の方へ視線を向ければ、ズングリとした体型に大きな人の手とギョロリとした一つ目を持つ気味の悪い呪霊が現れた。