第44章 決戦のアッチェーソ【呪術廻戦0】
「【猿鬼】!」
【猿鬼】の背に飛び乗り、灰原が呪霊へ向かって行く。その背中から跳躍し、呪霊の頭に蹴りを入れた。だが、すぐに尻尾で弾き飛ばされてしまう。
「灰原さ……っ」
「来るな! 星良ちゃんは治療を続けて‼」
浅く息を吐きながら……額から血を流しながら、灰原がふらりと立ち上がった。震える身体を引きずる灰原の顔を、【猿鬼】と【大熊】が心配そうに覗き込む。
「灰原さん!」
呪霊が灰原へ突っ込んでいった。主人を守ろうと【猿鬼】が反撃しようとするが、爪を振りかぶった【猿鬼】が頭から呑み込まれ、消滅する。
だが、灰原に悲観的な様子はなく、彼は口角を上げた。
「ありがとう、星良ちゃん……でも、もう大丈夫だよ」
再び牙を剥く呪霊が弾き飛ばされる。現れた彼は「ふー」と深く息を吐き出し、灰原を振り返った。
「無事なようですね」
「遅いよ、七海」
「七海さん……」
ほっと肩の力が抜ける。七海と目が合うとたまらなくて、泣きそうになった。
「灰原、【折神】はまだ残っていますか?」
「充分! とは言えないけど……まだいけるよ」
「では、あなたは星良さんたちが巻き込まれないように守りを固めてください。ここは私が」
頼もしい同期に灰原が頷く。【大熊】が怪我でふらつく主人を抱え、星良の傍まで運んだ。
灰原が戦っている間に、重傷だった術師の治療は終わった。後は目が覚めるのを待つだけ。