第44章 決戦のアッチェーソ【呪術廻戦0】
「……全部は無理だな」
星也は【白虎】を呼び、加茂のもとへと戻った。
「すまない。急用が入った」
「急用? このタイミングで……?」
加茂が戸惑うのも無理はない。数は減らしたとはいえ、まだ進行は続いているのだから。
「誰なの、星也さんを呼んだのは? あなたにここを離れられたら困るんですけど。あたしたちを殺す気かしら?」
真依の言葉には苦笑するしかない。
そこへ、「ちょっと!」と垂水が憤慨した様子で東堂とやって来た。
「誰さ! 僕の戦ってた一級を祓ったの! 【黒閃】まで見せつけてさ‼︎」
「腕前は見事としか言いようがないが、獲物を横取りされて黙ってる俺ではないぞ」
「お前たち、特級と戦ってたんじゃないのか?」
「「もう祓った」」
加茂の問いに東堂と垂水の声が揃う。
「ははっ。大丈夫そうだな。あとは頼んだよ」
これだけ威勢のいい術師がいるんだ。実力も充分。不安がないわけではないが、任せるしかない。
「憲紀。【玄武】は置いていくから、医療班の心配はしなくていい。けど、無茶はしないで」
【玄武】には星也の呪力を込めた呪符を持たせている。自分に万が一があっても、今日の二十四時までは顕現できる。全体的な呪霊の残数をみても充分だろう。
「二人とも、獲物を横取りしてすまなかった。僕はここを離れるから、存分に力を奮ってくれ」
「言われるまでもない。さっさと終わらせて高田ちゃんの特番を観る」
「東堂、北と西にまだ行ってないけど、どっち?」
「西。この前の東西クイズ対決の番組で高田ちゃんがいた方だ」
オッケーと言って、東堂は西、垂水が北へ走って行った。
「おい、二人とも! 持ち場を離れるな!」
加茂も苦労するな……おっと、急がなければ。時間を確認すると、五条と電話を終えて五分が経過していた。